痛風・高尿酸血症外来

高尿酸血症(尿酸が高い)方へ

健康診断の項目に尿酸値(UA)があります。尿酸は痛風の原因となるもので、痛風とは「結晶性関節炎」に分類される急性関節炎の一種です。
尿酸は急性関節炎以外に既存の変形性関節症の悪化を進めたり、慢性の関節炎を起こすこともあります。
更に、生活習慣病や心臓病、腎機能障害の原因となることも知られており、正常化させることが必要です。
学会から示されているガイドラインでは痛風発作のある人は、正常値を超えている場合に数値によらず治療を行うことが推奨されていますが、発作の無い方は8.0mg/dl以上が治療の対象となります。目標値は6.0mg/dl以下です。

  • 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン
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痛風について

痛風は尿酸の結晶が関節の周囲にこびりつき、関節の中に剥がれた結晶が浮遊することで発生する関節炎です。
尿酸は体温では7.0mg/dl前後の濃度までしか水に溶けないため、これ以上の濃度になると関節を初め様々な臓器の表面にこびりつき(沈着し)ます。
通常、沈着しただけでは急性の関節炎はおこりません。
何らかの原因で、この沈着した尿酸血症が剥がれ落ち、関節の中に浮遊すると急性で激しい炎症を生じます。

この痛みは、当初、いつのまにか捻挫のような痛みを下肢(親指の付け根や足首、ときに膝など)に感じ、徐々に強くなってゆきます。最終的に痛くて脚がつけない状態にまで至ることもあります。「風邪が吹いても痛い」と表現されることもありますが、痛みはかなり激烈です。
この状態で通常は消炎鎮痛剤などを内服して、痛みを和らげますが放置しても最大1週間程度で改善が認められます。

尿酸が高いと痛風を起こしますが、発作は剥がれた結晶によって誘発されますので、常に尿酸値が高いと、沈着した結晶の上に結晶が積み上がり、剥がれます(遊離結晶)し、逆に尿酸を下げる治療を開始して暫くすると、雪国の根雪が溶けるように沈着した結晶の一部が溶解して、遊離結晶を生じて痛風の発作が起こることがあります。

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン

慢性痛風と変形性関節症の進展

ここまで読んできて、遊離結晶が生じないのであれば、尿酸値を高いままにしておいてもよいかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
関節への慢性の尿酸沈着は沈着部位で非常に小さな炎症が継続的に起こるため、長期間の持続により関節や骨の変形を引き起こします(慢性関節炎)。
また、このような関節は外からの力に弱くなりますので、もともと変形性関節症のある患者さんは変形が通常の患者さんより早く進行してしまうことがあります。また、関節周囲の皮下組織に結晶を中心にしたタコのような隆起(痛風結節といいます)を生じることがあります。
痛風結節からは、常時炎症を引き起こす物質が放出され、さらに周囲の関節を変形させるような影響を及ぼすことがあります。

  • 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン
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高尿酸血症の関節外症状

尿酸値が高いと関節のみに影響が出るわけではありません。血液中の尿酸は動脈などの血管の壁に染みこみ、そこで炎症を起こして血管が細くなったり動脈硬化の病変を進めたりします。
この結果、尿酸値が高いと心筋梗塞や脳梗塞などの血管の病気が増えることが知られています。
また、腎臓の中では、血管が障害されることによって血流が悪くなることや、結晶成分が形成されることで慢性的な炎症が発生し、腎機能が悪化することがあります。また、尿酸値が上昇していると尿に排泄される尿酸も多くなり、腎臓の中に石(腎結石)が形成されることもあります。

血中UAの血管平滑筋細胞へのuptakeが血管内皮細胞障害と最小血管の壁肥厚・硝子化を誘導する

このような理由から血清の尿酸値を低下させることは重要です。
以下には腎臓病と高尿酸血症の関係について示します。

  • 痛風患者の20~40%に軽度で間欠的アルブミン尿を認める。
  • 男性では13mg/dl、女性では10mg/dl以上で腎機能障害を認める。
  • 無症候性高尿酸血症に対する治療がされていなかった時代、腎不全による死亡は10%。
  • 典型的urate nephropathy (痛風腎)
    間質や腎錐体への尿酸結晶の沈着と周囲に巨細胞を含めた細胞浸潤。単独で腎機能を障害を進展させるか不明。
    併存する虚血性心疾患や高血圧、腎虚血が腎機能増悪因子。
  • Uric acid nephropathy (尿酸腎症)
    集合管や尿管への結晶沈着により生じるAKIで、乏尿や無尿を呈する。リンパ腫や白血病などでみられ、時に化学療法のあとにも見られる(腫瘍溶解症候群)。腫瘍溶解症候群ではUA値は12~80mg/dlまで達し、酸性尿と高尿酸尿[尿中UA/Crが1.0を超えることもある(他疾患では0.4±0.3)]が発症の誘因となり、高尿酸血症に加え乳酸アシドーシス、高カリウム・高リン・低カルシウム血症を呈する。
    このほか、激しい運動後やてんかん発作、血管造影やCABGのあとなどにも稀に見られる。
  • 尿酸結石は10~25%の患者にみられる。13mg/dl以上(もしくは1,100mg/day)で高リスクとなる。

高尿酸血症と生活習慣病

尿酸値が高い人は他の生活習慣病を合併していることを多く見かけます。
肥満や糖尿病はそれが原因となって尿酸値が上昇することもありますし、逆に高尿酸血症が持続すると血糖の異常が生じることも示されています。
肥満のある患者さんが減量することによって尿酸値が下がることもあります。また、高尿酸血症の方では高血圧を合併している頻度が高く、心臓病や脳卒中などの血管病変を防ぐためには、同時に治療をすすめてゆくことが望ましいと考えます。

同じくらいプリン体を摂取しても尿酸値の上昇や痛風発作を全員が来すというわけではありません。
腎機能がもともとあまり良くない場合、尿酸値は上昇しやすいですが、ほかには遺伝による影響がかなり多いことが知られています。
これには、尿酸を腎臓から排泄する力が遺伝的に弱い人や肝臓での尿酸の生成が多いなどの体質があります。
著しい高尿酸を認める場合には遺伝子診断が必要となる場合もあります。

高尿酸血症の治療

当院においては薬物療法と食事指導を行います。
尿酸の上昇する食品として、魚卵などがよく挙げられますが、実際にはアルコール、糖質(果糖を含む)が多い傾向があります。ほかに高タンパク食(肉・魚・乾物など)も原因となります。
痛風発作は運動習慣のある方にも起こる傾向がみられ、脱水や関節にかかる過度な負担などが要因となっていることが示唆されます。
生活習慣を整えて、BMIやウエスト径を減少させることも有効とされます。
薬の副作用によって尿酸値が上昇することもあります。
尿酸の増加を引き起こすお薬で有名なのは利尿薬です。また、抗がん剤などは治療によって癌細胞が壊されることによって、そこから放出される尿酸によって、高尿酸となることが知られています。

薬物療法は、肝臓で尿酸の合成(プリン体から作られます)を抑制するお薬(フェブキソスタット、アロプリノールなど)や尿中への排泄を促すお薬が用いられます。
尿酸値が高い方は、肝臓で尿酸を多く作っている場合と腎臓からの排泄が少ない場合とがあります。
原因に適した治療を行うことが望ましいですが、最近では薬物療法が発達してきており、いずれの薬剤を使用しても尿酸の濃度はよく低下するようになってきましたが、尿路結石などがある患者さんでは尿中へ排泄を促すお薬は不向きです。
また、沈着している尿酸血症が遊離すると発作を誘発・助長する恐れがあるため、痛風発作中は尿酸低下薬を内服するのは控えなくてはなりません。

痛風発作の治療

痛風の発作中には、一般に非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDsと呼ばれます)の内服が一般的です。
炎症を収めるために、しばしば最大用量の内服が必要となりますが、もともとの腎機能への配慮や脱水によって急に腎臓が悪くなることがあるので医療機関を受診して、医師の指導のもと治療を行う必要があります。
ほかに発作を抑える、悪化を防ぐ目的でコルヒチンというお薬を使用することもあります。
海外ではファーストチョイスですが、下痢や腹痛といった副作用があるため、本邦では海外ほど用いられないケースが多いです。
さらに、腎機能が悪化したり、悪化が懸念される場合、副腎皮質ステロイド薬(コルチコステロイド)が用いられることもありますが、コルチコステロイドは長期使用で尿酸の上昇や多くの付く作用を誘発するおそれもあるので、短期間での中止が必要です。

偽痛風について

偽痛風について

痛風は結晶性関節炎といわれ、尿酸の結晶が関節に沈着して生じる病気です。
同様に、尿酸以外の結晶が沈着する場合があります。
この一つが偽痛風(ぎつうふう)です。偽痛風ではピロリン酸カルシウム(CPPD)と呼ばれる結晶が関節軟骨に沈着して生じる病気です。
多くは膝、肩、足首場合によっては頸部(頸椎)にも沈着を生じます。
痛みは急性でかなり強く、採血をするとCRPなど炎症反応がかなり高くなります。
有名な所見は膝の半月板という軟骨の表面に沈着したカルシウムを認めることでメニスカス・サインなどという名前が付いています。
痛みがかなり強いため、歩くことが困難になり、日常生活が妨げられることもしばしばです。
腫れ上がった関節から関節液を抜き、ピロリン酸カルシウムの結晶が証明されれば、診断となりますが、実際にはレントゲンなどで特徴的な所見を認め診断されることもしばしばです。

治療は、消炎鎮痛剤や場合によってはコルチコステロイドが用いられます。
高尿酸薬は無効ですが、白血球が局所に集まることを防ぐためにコルヒチンなど使われることもあります。